半導体分野におけるIPとは「Intellectual Property（知的財産）」の略称で、マイクロプロセッサやメモリなどの「設計に関する機能ごとの回路情報（設計資産）」を指す。IPベンダーは、IPを提供する企業や組織のことを指し、「IPプロバイダー」とも呼ばれる。IPベンダーは、開発したIPやIPを組み合わせた製品の設計図をライセンスとして他企業に販売。製品一つ一つに対するロイヤリティ収入を売上高とする。

IP関連のメーカーには、IPベンダーの他に「ファブレス（fabless）」や「EDAベンダー」がある。ファブレスとはファブ（fabrication facility、工場）を持たないメーカーのことで、半導体の用途に応じて企画・設計・開発を行い、生産は「ファウンドリー（foundry）」と呼ばれる生産工場を持つメーカーに外部委託する。EDAとは「Electronic Design Automation」の略称で、作業の効率化や自動化を図るための各種ツールやソフトウェアのこと。EDAベンダーは、半導体設計ソフトウェアをファブレスに販売する。また、IPベンダーはIP開発の際にEDAのツールを利用している。

近年、AI（人工知能）やIoTといったデジタル技術が生み出されるなか、半導体技術の重要性が増している。半導体の設計は非常に複雑で、多くの時間とリソースが必要とされる。そのため、IPベンダーがIPの開発・設計を請け負い、他の工程を分業化することで、手間と時間の削減を図っている。さらに、IPベンダーが製品の信頼性や互換性を担保し、新製品の設計における不具合リスクを低減している。
（青木逸美）